カンガルー郷さんは雄ですが、何故かおなかに袋があり、仲間からいじめられていました。
子カンガルーしげるは小さな子供ですが、いつも一人ぼっちで悪いことばかりしていました。
ある日、いつものようにカンガルー郷さんがいじめられていると、子カンガルーしげるがひょっこりとやってきて、いじめていたカンガルーたちをボッコボコにしました。その時のしげるは虫の居所が悪く、圧倒的弱い者いじめをしている図にイラッとして、思わず手が出てしまったのです。
カンガルー郷さんも、しげるの悪い噂を知っていたので、次にボコられるのは自分だと思っていました。が、しげるはカンガルー郷さんをちらりと見ただけで、そのまま去っていったのです。
結果的に助けてもらったカンガルー郷さんは、しげるへの認識を「悪い子供」から「本当は心の優しい子」へと変えるのでした。
そんなことがあった日から数日後、相変わらず悪いことばかりするしげるに、カンガルー郷さんは胸を痛めていました。本当は優しい子なのに、何であんなことばかりするのだろう。
が、そこでカンガルー郷さんは気が付きました。
あの子はまだ小さいのに、ずっと一人で生きている。
つまり、お母さんのおなかの中で、優しく温かい時間を過ごしたことがないのかもしれない。
きっと、あの子は寂しいんだ。
それならば、誰かがあの子のお母さんになってあげれば、いい子になるかもしれない。
とは言うものの、カンガルーの間でも悪名高きしげるの母親になる物好きなど、到底いません。
どうしたものかと悩んだカンガルー郷さんは、雄の自分の体にある袋に、ハッと気が付きました。
お母さんになれなくても、温かさをあの子に与えることはできるかもしれない。
* * * * *
ある夜、一人ぼっちのしげるのねぐらに、カンガルー郷さんがやってきました。
「……アンタ、たしかこの前の」
「あの時は、助けてくれてありがとう。おかげで、あれからいじめられなくなったんだ」
「そう、でも別に助けたわけじゃないよ」
「いいんだ、結果として助けてもらったんだから。それで、お礼がしたいと思って」
そう言って、カンガルー郷さんは恥ずかしそうに、自分のおなかにある袋を開きます。
「…俺には、雌と同じ袋がある。良ければここに入ってみないか…?」
「……っ!!」
しげるはびっくりして、カンガルー郷さんの袋をマジマジと見ました。
確かに雌と同じ袋が、雄であるカンガルー郷さんのおなかについています。
中はとても温かそうで、何故かとても落ち着く匂いがしました。
「……俺が入っても、いいの?」
「いいんだ。お前がこれで満足してくれるなら……お礼になるなら」
顔を真赤にして恥ずかしがるカンガルー郷さんを見て、しげるの胸もドキドキします。
それに、自分がおなかの袋に入っていた頃のことなど、気づけば親がいなかったしげるにとって、薄い記憶だけです。
でも、すごく温かくて幸せだったような、そんな印象がありました。
「俺は雄だから、母親にはなれないけど……入って…くれるか?」
「……うん」
ドキドキする鼓動をおさえ、しげるは南郷さんの袋の中に、頭から入りました。
「……っ!!」
生まれて初めて袋の中に入られた感触に、カンガルー郷さんの体がビクンと震えます。
しげるの小さな体は、カンガルー郷さんの大きな袋の中に、すっぽりとおさまりました。
* * * * *
その日から、悪名高きしげるの名前は、少しずつカンガルーの間から消えてゆきました。
なぜなら、しげるが悪いことをしなくなったからです。
温かいカンガルー郷さんと、温かい袋に癒されて、悪いことをする気がなくなったのでした。
でも、もともと気の強いしげるは、たまにケンカやいたずらをします。
その場合、カンガルー郷さんはしげるを叱って、反省したら袋に入れてあげるのです。
その時のしげるは、心底幸せそうな顔をするのでした。
おしまい
なんかもう馬鹿すぎる自覚はあるのですが、こういうのを考えるのがものすごく楽しいです。
これってほのぼのですよね?ね?
子カンガルーしげるは小さな子供ですが、いつも一人ぼっちで悪いことばかりしていました。
ある日、いつものようにカンガルー郷さんがいじめられていると、子カンガルーしげるがひょっこりとやってきて、いじめていたカンガルーたちをボッコボコにしました。その時のしげるは虫の居所が悪く、圧倒的弱い者いじめをしている図にイラッとして、思わず手が出てしまったのです。
カンガルー郷さんも、しげるの悪い噂を知っていたので、次にボコられるのは自分だと思っていました。が、しげるはカンガルー郷さんをちらりと見ただけで、そのまま去っていったのです。
結果的に助けてもらったカンガルー郷さんは、しげるへの認識を「悪い子供」から「本当は心の優しい子」へと変えるのでした。
そんなことがあった日から数日後、相変わらず悪いことばかりするしげるに、カンガルー郷さんは胸を痛めていました。本当は優しい子なのに、何であんなことばかりするのだろう。
が、そこでカンガルー郷さんは気が付きました。
あの子はまだ小さいのに、ずっと一人で生きている。
つまり、お母さんのおなかの中で、優しく温かい時間を過ごしたことがないのかもしれない。
きっと、あの子は寂しいんだ。
それならば、誰かがあの子のお母さんになってあげれば、いい子になるかもしれない。
とは言うものの、カンガルーの間でも悪名高きしげるの母親になる物好きなど、到底いません。
どうしたものかと悩んだカンガルー郷さんは、雄の自分の体にある袋に、ハッと気が付きました。
お母さんになれなくても、温かさをあの子に与えることはできるかもしれない。
* * * * *
ある夜、一人ぼっちのしげるのねぐらに、カンガルー郷さんがやってきました。
「……アンタ、たしかこの前の」
「あの時は、助けてくれてありがとう。おかげで、あれからいじめられなくなったんだ」
「そう、でも別に助けたわけじゃないよ」
「いいんだ、結果として助けてもらったんだから。それで、お礼がしたいと思って」
そう言って、カンガルー郷さんは恥ずかしそうに、自分のおなかにある袋を開きます。
「…俺には、雌と同じ袋がある。良ければここに入ってみないか…?」
「……っ!!」
しげるはびっくりして、カンガルー郷さんの袋をマジマジと見ました。
確かに雌と同じ袋が、雄であるカンガルー郷さんのおなかについています。
中はとても温かそうで、何故かとても落ち着く匂いがしました。
「……俺が入っても、いいの?」
「いいんだ。お前がこれで満足してくれるなら……お礼になるなら」
顔を真赤にして恥ずかしがるカンガルー郷さんを見て、しげるの胸もドキドキします。
それに、自分がおなかの袋に入っていた頃のことなど、気づけば親がいなかったしげるにとって、薄い記憶だけです。
でも、すごく温かくて幸せだったような、そんな印象がありました。
「俺は雄だから、母親にはなれないけど……入って…くれるか?」
「……うん」
ドキドキする鼓動をおさえ、しげるは南郷さんの袋の中に、頭から入りました。
「……っ!!」
生まれて初めて袋の中に入られた感触に、カンガルー郷さんの体がビクンと震えます。
しげるの小さな体は、カンガルー郷さんの大きな袋の中に、すっぽりとおさまりました。
* * * * *
その日から、悪名高きしげるの名前は、少しずつカンガルーの間から消えてゆきました。
なぜなら、しげるが悪いことをしなくなったからです。
温かいカンガルー郷さんと、温かい袋に癒されて、悪いことをする気がなくなったのでした。
でも、もともと気の強いしげるは、たまにケンカやいたずらをします。
その場合、カンガルー郷さんはしげるを叱って、反省したら袋に入れてあげるのです。
その時のしげるは、心底幸せそうな顔をするのでした。
おしまい
なんかもう馬鹿すぎる自覚はあるのですが、こういうのを考えるのがものすごく楽しいです。
これってほのぼのですよね?ね?
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[ 2010/09/21 21:35 | 企画参加 ]